円形脱毛症

医薬品フィナステリドとの違いは?

ノコギリヤシがAGAに効果があるかもしれない、と言われる理由の一つに、AGA治療薬である「フィナステリド」と似た作用(5αリダクターゼ阻害)を持つ可能性が指摘されていることがあります。しかし、ノコギリヤシとフィナステリドは、その位置づけや効果、安全性において、明確な違いがあります。まず、最も大きな違いは「分類」です。フィナステリド(商品名プロペシアなど)は、医師の処方が必要な「医療用医薬品」です。これは、厳格な臨床試験によってAGAに対する有効性と安全性が確認され、厚生労働省によって承認されていることを意味します。一方、ノコギリヤシは、日本では「食品(健康食品・サプリメント)」として扱われます。医薬品のような厳格な有効性・安全性の審査や承認プロセスを経ておらず、あくまで栄養補助や健康維持を目的としたものです。次に、「効果の確実性」です。フィナステリドは、多くの大規模臨床試験によって、AGAの進行抑制効果(抜け毛の減少、現状維持)が明確に証明されています。一方、ノコギリヤシのAGAに対する効果は、前述の通り、まだ限定的な研究で示唆されている段階であり、その効果の確実性や程度は、フィナステリドほど確立されていません。「作用機序の特異性」も異なります。フィナステリドは、5αリダクターゼⅡ型を選択的に阻害するように設計された薬剤です。ノコギリヤシも5αリダクターゼを阻害する可能性が示唆されていますが、その作用はフィナステリドほど特異的ではなく、他の様々な成分が複合的に作用していると考えられています。「品質の均一性」にも違いがあります。医薬品であるフィナステリドは、製造工程や品質管理が厳格に定められており、製品ごとの有効成分の含有量は安定しています。一方、サプリメントであるノコギリヤシは、メーカーや製品によって、エキスの抽出方法や含有量、品質にばらつきがある可能性があります。このように、ノコギリヤシとフィナステリドは、似た作用機序が期待されているものの、その法的な位置づけ、効果のエビデンスレベル、品質管理などにおいて大きな違いがあります。AGA治療を考える際には、これらの違いを理解し、医師と相談の上で適切な選択をすることが重要です。