多くの方が悩むAGA（男性型脱毛症）の治療が、なぜ健康保険の適用対象とならないのでしょうか。その背景には、日本の医療保険制度の基本的な考え方があります。公的医療保険は、国民が病気や怪我をした際に、安心して医療を受けられるように、医療費の一部を国や保険者が負担する制度です。保険が適用されるのは、基本的に「治療の必要性が高い疾患」や「日常生活に支障をきたす機能障害」などが対象となります。AGAは、進行性の脱毛症であり、悩む方にとっては深刻な問題ですが、医学的には生命維持に直接関わる病気とは考えられていません。どちらかというと、容姿に関わる問題、つまり「美容」の領域に近いと捉えられています。美容目的の医療行為、例えばシミ取りレーザーや二重まぶたの手術などが保険適用外であるのと同じように、AGA治療も「QOL（生活の質）の向上」や「見た目の改善」を主目的とした医療サービスとみなされる傾向があるのです。また、日本の医療保険制度は、国民が納める保険料や税金によって支えられています。限られた財源を、より緊急性の高い疾患や、多くの国民が必要とする基本的な医療に優先的に配分するという考え方があります。もしAGA治療を保険適用にしてしまうと、治療を希望する人が非常に多くなり、医療費が増大し、保険制度全体の維持が困難になる可能性も指摘されています。さらに、AGAの発症には遺伝的要因や加齢といった、いわゆる「体質」や「生理的な変化」に近い側面もあります。これらの理由から、現在の保険制度の枠組みの中では、AGA治療を保険適用とすることは難しいのが現状なのです。この点を理解した上で、治療を検討する必要があります。
なぜAGA治療に保険がきかないのかその理由
