お子さんの前髪の生え際や分け目、あるいはいつも髪を結んでいる部分の髪が薄くなっているように見える場合、それは「牽引性脱毛症(けんいんせいだつもうしょう)」かもしれません。これは、特定の髪型によって、髪の毛が長時間にわたって強く引っ張られ続けることで、毛根に負担がかかり、その部分の髪が抜け落ちてしまう脱毛症です。特に、髪の長い女の子によく見られます。例えば、毎日きつくポニーテールやお団子ヘアにしている、三つ編みや編み込みを強く引っ張って結んでいる、バレエなどでシニヨンにする機会が多い、といった場合に起こりやすいです。いつも同じ位置で髪を分けていることも、分け目部分の毛根に負担がかかり、牽引性脱毛症の原因となることがあります。症状としては、髪を引っ張っている部分の毛が徐々に細くなったり、抜け毛が増えたり、地肌が透けて見えるようになったりします。ひどくなると、その部分の毛が生えてこなくなることもあります。痛みやかゆみを伴うことは少ないため、気づきにくいこともあります。牽引性脱毛症の対策は、原因となっている「髪への牽引力(引っ張る力)」を取り除くことが基本です。まず、髪を結ぶ場合は、きつく縛りすぎず、少し緩めにするように心がけましょう。シュシュなどの柔らかい素材のヘアアクセサリーを使うのも良いでしょう。毎日同じ髪型にするのではなく、髪を下ろす日を作ったり、結ぶ位置を変えたり、分け目の位置を定期的に変えたりすることも有効です。これにより、特定の毛根への負担を分散させることができます。もし、バレエやスポーツなどで特定の髪型をする必要がある場合は、それ以外の時間はできるだけ髪に負担のかからない髪型で過ごすようにしましょう。牽引性脱毛症は、原因を取り除けば改善することが多い脱毛症です。しかし、長期間にわたって強い力が加わっていた場合、毛根がダメージを受けてしまい、回復が難しくなることもあります。もし、お子さんの髪型が原因で薄毛になっているのではないかと疑われる場合は、早めに髪型を見直すとともに、症状が気になるようであれば皮膚科に相談することをお勧めします。