「最近、なんだかやる気が出ない」「疲れが取れない」。そんな不調の原因は、もしかしたら「睡眠」にあるかもしれません。そして、その不調は、睡眠不足が引き起こす男性ホルモンのバランスの乱れと深く関係している可能性があります。睡眠は、単に体を休ませるだけの時間ではありません。日中に受けたダメージを修復し、体の様々な機能を正常に保つための、極めて重要なメンテナンス時間なのです。特に、男性ホルモンであるテストステロンの分泌において、睡眠は決定的な役割を果たします。テストステロンは、24時間の中で分泌量が変動しますが、そのピークは早朝、つまり、夜間の睡眠中に最も活発に作られることが分かっています。ある研究では、睡眠時間を制限された若年男性のテストステロン値が、わずか1週間で大幅に低下したという結果も報告されています。これは、睡眠時間が短いほど、テストステロンを生成するための貴重な時間が失われてしまうことを意味します。つまり、慢性的な睡眠不足は、テストステロン不足に直結し、気力の低下や性機能障害、筋肉量の減少といった、いわゆる男性更年期障害に似た症状を引き起こす大きな原因となり得るのです。さらに重要なのが、睡眠の「時間」だけでなく「質」です。テストステロンの分泌には、特に深い眠りである「ノンレム睡眠」が深く関わっているとされています。たとえベッドに長くいても、眠りが浅かったり、夜中に何度も目が覚めたりするようでは、質の良い睡眠が取れているとは言えません。ホルモンバランスを整えるためには、深くぐっすりと眠ることが不可欠なのです。では、質の高い睡眠を得るためにはどうすれば良いのでしょうか。まず、就寝前の習慣を見直すことが大切です。就寝1〜2時間前には、スマートフォンやパソコンの画面を見るのをやめましょう。ブルーライトは脳を覚醒させ、自然な眠りを妨げます。また、寝室の環境を整えることも重要です。部屋を真っ暗にし、静かで快適な温度・湿度を保つように心がけてください。日中に適度な運動をしたり、ぬるめのお湯にゆっくり浸かったりすることも、スムーズな入眠を助けます。男性ホルモンのバランスを整えたいと考えるなら、まずは全ての基本となる「睡眠」を見直すこと。それが、サプリメントや特別な食事療法よりも、はるかに重要で効果的な第一歩となるでしょう。