髪の健康に良いとされる亜鉛ですが、「たくさん摂れば摂るほど効果がある」というわけではありません。むしろ、亜鉛を過剰に摂取することは、体に様々な悪影響を及ぼす可能性があり、逆効果になりかねません。亜鉛には、厚生労働省によって「耐容上限量」が定められています。これは、健康な人が長期的に摂取しても健康障害を起こすリスクがないとされる上限の量のことです。成人男性では1日40~45mg、成人女性では1日35mgが目安とされています(年齢によって多少異なります)。通常の食事からこの上限量を超えることは稀ですが、サプリメントなどを利用している場合は、注意が必要です。では、亜鉛を過剰摂取すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。まず、急性の過剰摂取(一度に大量に摂取した場合)では、「消化器系の症状」が現れることがあります。吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などが代表的な症状です。また、長期的に過剰摂取が続いた場合に懸念されるのが、「他のミネラルの吸収阻害」です。特に、「銅」と「鉄」の吸収が妨げられることが知られています。銅は、鉄の代謝やヘモグロビンの生成、骨の形成などに必要なミネラルです。鉄は、言わずと知れた貧血予防に不可欠なミネラルです。亜鉛を摂りすぎることで、これらの重要なミネラルの吸収が悪くなり、結果として銅欠乏による貧血や骨の異常、鉄欠乏性貧血などを引き起こす可能性があるのです。さらに、亜鉛の長期的な過剰摂取は、「免疫機能の低下」を招く可能性も指摘されています。適量の亜鉛は免疫機能を維持するために必要ですが、過剰になると逆に免疫細胞の働きを抑制してしまうことがあるのです。その他、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の低下なども報告されています。これらのリスクを避けるためには、サプリメントを利用する場合、必ず製品に記載されている1日の摂取目安量を守ることが鉄則です。複数のサプリメントを併用している場合は、合計の亜鉛摂取量が過剰にならないように注意しましょう。もし、亜鉛サプリメントを摂取していて、何らかの体調不良を感じた場合は、すぐに摂取を中止し、医師に相談するようにしてください。亜鉛は髪にも体にも重要なミネラルですが、「適量」を摂取することが何よりも大切なのです。