甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態を「甲状腺機能亢進症」と言います。代表的な病気には「バセドウ病」があります。甲状腺機能亢進症になると、全身の新陳代謝が必要以上に活発になり、様々な症状が現れますが、その一つとして「抜け毛」や「薄毛」が見られることがあります。なぜ、甲状腺ホルモンが過剰になると髪が抜けてしまうのでしょうか。甲状腺ホルモンは、髪の毛の成長サイクル（ヘアサイクル）にも影響を与えます。ホルモンが過剰になると、新陳代謝が異常に早まり、髪の毛の成長期が通常よりも短縮されてしまうと考えられています。本来であれば、数年間かけて太く長く成長するはずの髪の毛が、十分に成長しきらないうちに退行期・休止期へと移行し、抜け落ちてしまうのです。その結果、抜け毛が増加し、全体的に髪のボリュームが減ったように感じられることがあります。また、甲状腺機能亢進症では、髪の毛一本一本が細く、柔らかくなる傾向も見られます。髪にハリやコシがなくなり、手触りが変化したと感じる方もいるかもしれません。脱毛のパターンとしては、特定の部位だけが薄くなるのではなく、頭部全体の髪が均等に抜ける「びまん性脱毛」となることが多いようです。甲状腺機能亢進症による抜け毛は、病気の症状の一つとして現れるため、通常は脱毛以外の全身症状も伴います。例えば、動悸（心臓がドキドキする）、手の震え、暑がり、多汗、体重減少（食欲はあるのに痩せる）、イライラ感、眼球突出（バセドウ病の場合）などです。もし、抜け毛とともにこれらの症状が見られる場合は、甲状腺機能亢進症の可能性を疑い、早めに内科や内分泌科を受診することが重要です。甲状腺機能亢進症による薄毛は、原因となっている病気自体の治療（内服薬、アイソトープ治療、手術など）を行い、ホルモンバランスが正常化すれば、多くの場合、改善が期待できます。